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ウェイト版タロットのシンボリズム:[0.愚者]-2

前回の「ウェイト版タロットのシンボリズム~」で、[0.愚者]のカードの人物が手に持っている《白い薔薇》について書きました。今回は人物の足元にいる《白い犬》について見ていきます。 (以下の写真:ウェイト版[0.愚者])

(出典:Wikimedia Commons/ウェイト版タロット・Holly Voleyによる1909年版のスキャン画像/作画:パメラ・コールマン・スミス)

ウェイト自身の解説書『The Pictorial Key to the Tarot』の《白い犬》についての記述は「his dog is still bounding(彼の犬はまだ飛び跳ねている)」という一文しかありません。

タロットの本で《白い犬》についての記述でよく見るのは、「犬は崖の傍にいる人物に対して警告を発している」というようなものです。 『タロット占術大全』(著:伊泉龍一/説話社)では、「サンドラ・トムソンの『タロット辞典』のなかでは、白い犬を「愚者の魂を導くガイド」を表しているのかもしれないと述べている」と書かれています。 『シークレット・オブ・ザ・タロット』(著:マーカス・カッツ 他/訳:伊泉龍一/フォーテュナ)では、「信仰」を意味し、「信仰は神との合一への暗がりへ向かって、その淵を越えて渡るために真に捧げることのできる唯一のものである」と書かれています。

以上を見ると《白い犬》は、[愚者]の人物を正しく導く役割の意味を担っているようです。

『世界シンボル辞典』(三省堂)の「犬」の項目を見ると、このシンボルは世界中の様々な宗教や神話でもしばしば「警戒」「導者」「忠誠」を表すとされます。 例えばエジプト(神話)では「犬は、タカの頭をもつ太陽神を先導し、太陽が軌道をはずれないようにする」と書かれています。(ちなみに「タカ」と同じような象徴の意味を持つ「ワシ」のシルエットが、[愚者]の人物の持つ袋に書かれていると一説では言われています。「ワシ」は四大元素の内の空気の象徴です)

またギリシア・ローマ(神話)の項目では「ヘルメス(ギリシア神話の伝令神)は〈善き牧者〉として犬のシリウス(「すべてを見る不眠の警戒心」)をつれている」「魂の導者」と書かれています。

神の世界から降り立ったとされる[愚者]の人物の、恐れを知らない楽観的で自由な冒険心は、この《白い犬》の存在によって保障されているのかもしれません。

明け告げ鳥の庭 2021