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ウェイト版タロットのシンボリズム:はじめに/[0.愚者]-1

タロットには様々なバージョンがありますが、その中でもポピュラーなウェイト版タロットには、作者のウェイトによって様々なシンボル(象徴的な意味を示すもの)がおり込まれています。 (以下の写真:ウエイト版[17.星][18.月])

17.星

18.月

(出典:Wikimedia Commons/ウェイト版タロット・Holly Voleyによる1909年版のスキャン画像/作画:パメラ・コールマン・スミス)

例えばこの大アルカナの[17.星]と[18.月]のカードを見ると、[17.星]では《裸の女性》、《2つの水瓶》、《8つの星》など、[18.月]では《下の水から上がってくるザリガニ》、《犬のような2匹の動物》など、さまざまな気になる物が描かれています。 このようなシンボルについて、その意味をウエイト自身は明確に示していないため、後のタロティストの間で様々な解釈がなされ、未だに謎の部分もたくさんあります。なので、確実な答えというものは無いのですが、これらシンボルのもつ意味を探ることで、よりカードの意味を深めることができ、また知るだけでも面白さを感じられると思います。 ということで、今回から何回かに分けて、ウェイト版タロット(の大アルカナ)に描かれているシンボルに少しずつ触れていこうと思います。

(シンボルの意味を見ていくにあたり、ウェイト版のシンボルの意味を扱ったいくつかの本や、ウェイト自身のウェイト版タロットの解説(「The Pictorial Key to the Tarot」)を参考にしていきます。)

今回は大アルカナの[0.愚者]を見ていきます。 (以下の写真:ウェイト版[0.愚者])

0.愚者

(出典:Wikimedia Commons/ウェイト版タロット・Holly Voleyによる1909年版のスキャン画像/作画:パメラ・コールマン・スミス)

まずシンボルを見て行く前に、[愚者]のカードの一般的な意味には次のようなものがあります。「自由・純粋さ」、「冒険精神」、「人生の新たな局面に飛び込む」などです。 (ウェイト版[愚者]は文字通りの「愚かな者」を表しているわけではありません。上位(神)の世界から降り立ってさまざまな探求をしていくカードの人物の、その存在性を隠すために、意図的にウェイトが「愚者」という名前にしたというような話もあります。)

それでは[愚者]のカードに描かれているシンボルを見ていきます。

まずは[愚者]の人物の手に持たれている《白い薔薇》についてです。

白い薔薇

この《白い薔薇》の意味としてタロティストの間でよく言われるのが「無垢」「純粋さ」です。 『世界シンボル辞典』(三省堂)の《白い薔薇》のキリスト教の項目を見ても、「無垢」「純潔」という意味が並びます。 最近出版され日本のタロティストの間で話題になった『シークレット・オブ・ザ・タロット』(著:マーカス・カッツ 他/訳:伊泉龍一/フォーテュナ)の中では[愚者]の《白い薔薇》は、ウェイトの所属していた魔術結社・黄金の夜明け団で使われていた意味として、「沈黙」を意味すると書かれています。 確かに《薔薇》には「沈黙=秘密」という意味もあり、ウェイトの立場であるキリスト教神秘主義という位置づけからすると、2つの意味が組み合わされていた可能性もあります。すなわち「上位からの使者であるこのカードの人物の、純粋で自由な意図は他には秘密にされ隠されている」という意味にもとれます。

長くなってしまったので今回はここまでにして、次回は[愚者]の人物の足元に描かれている《白い犬》について見ていこうと思います。

明け告げ鳥の庭 2021